Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…お疲れさん。」
遼太郎は俊次をねぎらいながら、改めてその姿を見て、我が弟のその大きさに舌を巻く。3人掛けのソファからも飛び出している16歳のその体は、高校に入学した時よりも優に二回りは大きくなっていた。
「あっ…!兄ちゃん、そこ。怪我してるじゃんか!」
と、俊次は起き上がりながら、自分の体の肘のところを指さした。
言われて、遼太郎もTシャツから覗いている自分の肘を見下ろすと、やはり擦り傷が出来ていた。
「そんな大きな傷、気が付かなかったのかよ?」
信じられないような顔をしている俊次は、その大きな体に似合わず、傷や痛みには弱いらしい。
遼太郎は救急箱の中から絆創膏を取り出して、傷口に手慣れた感じで貼り付けながら、小さく笑って息を抜いた。
「…ああ、そう言えば、兄ちゃん。仲松みのりちゃん、知ってるだろ?」
俊次のその言葉を聞いた瞬間、遼太郎の抜いたばかりの息が止まった。体も思考も硬直して、動けなくなる。
「……兄ちゃん?聞こえてる?」
遼太郎が返事をしないので、俊次が訝しそうな顔で覗き込んでくる。遼太郎は我に返って、心の動揺をごまかすように俊次に目を合わせた。