Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜


 …そして、その中に保存してある写真を表示させる。


 それは、みのりとのドライブの途中、菜の花畑で撮ったみのりの写真。

 もちろん、消去してしまうことなんて出来なかったが、みのりと別れてしまってから、その想いを押し隠すために一度も見ることのなかった写真だった。


 菜の花を手に、遼太郎の姿を確かめた時の微笑み――。


 いつも心に浮かべるものよりも、もっと可憐で可愛らしい笑顔が、遼太郎の全身に沁みわたって、心が切なく震える。


「……先生が、好きだ……。」


 どんなことがあっても、それは変わらない。
 きっと、遼太郎がこの世で最後の一呼吸をするまで変わることはない。


 こんなにも想いは募るのに、再びみのりのこんな笑顔を見られる時なんて来るのだろうか…?もう二度と、みのりとこんな幸せな時間は共有できないのではないか…?

 それを思うと、不安で押しつぶされそうになる。


 遼太郎にとって、みのりが側にいない未来は、そこに踏み出すことさえ躊躇してしまうほど、あまりにも暗かった。


――…だけど、こんな俺のままじゃダメだと思って、先生は俺から離れていったんだ…。


 不安に駆られるたびに、遼太郎はいつもみのりの意図を思い出して、自分を奮い立たせた。


――もっと、強くならないと…!!俺一人の力で、先生が望んでるように。先生の全てを、守れる人間になれるように…!


 唇を噛みながらそう思い、また新たに切ない決意を自分の中で固める。

 そして、うすら寒い部屋の中で、遼太郎はみのりの写真を見つめ続け…、なかなかその画面を閉じられないでいた。



< 383 / 775 >

この作品をシェア

pagetop