Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
ボールが出てくるまで、じりじりと待っているバックスとは違い、フォワードの俊次は息つく暇もなく激しく動き回っている。
花園予選が終わり、3年生が引退した後、まだ1年生ながらチームの中心となって頑張る俊次の姿がそこにはあった。
ラグビー部に入る時に、あれだけ渋ったのが嘘のように…。
ただ、ひたむきにタックルを繰り返す姿、最後まであきらめずに走る姿は、遼太郎と同じだ。今この瞬間に、自分が出来うるすべてを出し切ろうとするプレーは、みのりに遼太郎を思い出させた。
遼太郎がこの場所で縦横無尽に駆け回っていたのは、もう2年も前のことだ。みのりの目に焼き付いている高校生だった遼太郎の姿は、どこにも見えない。
こうやって自分は年を重ねていっても、思い描く遼太郎の姿は、あの時のまま変わらない。けれども、今はもう違う空の下で、きっとみのりの知らない遼太郎になっている…。
同じように、あの時の自分と今の自分とはかけ離れていって…、いつしか遼太郎の中にいる自分も風化して消え去っていく…。
お互い人生の中のほんの短いひと時を、共有しただけだ。そのひと時が、切ないほどに甘く満たされ、輝きすぎていただけで…。
それは、みのりにとってかけがえのないものだけれども、これから残りの人生、それだけにすがって、そこから動かないで生きていくわけにはいかない……。