Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 俊次の方も、試合中は澄ましていたが、みのりが応援に来てくれるとやっぱり嬉しかった。「俊次くん!俊次くん!」と、みのりの声が聞こえてくるたびに、むず痒いような気分になって、体が思ってもみないくらいに躍動した。


 観客席へ向かっての挨拶がすんで、保護者たちが声をかけてくれている中で、俊次はみのりの姿を探した。応援に来てくれたお礼を言うためだったが、本音を言えば自分の活躍を褒めてほしかった。

 観客席の中ほどで佇んでいるみのりを見つけて、スパイクシューズのまま駆け上がる。
 みのりの方は俊次の存在に気付いておらず、俊次が声をかけようとしたその時、


「…みのりさん!」


と、男の声が響いた。

 みのりの意識は必然的に、俊次ではなくその男の方へと向く。

 その男に、俊次は見覚えがあった。スラリと長身の眼鏡の男…、かつて学校の玄関でみのりが会っていた男だ。


「…えっ?!蓮見さん…?」


 俊次の驚きと同様に、みのりも戸惑ったような声を上げる。


「どうして、こんなところに…?」


 こんな無名の高校の試合の観戦に来るのは関係者ばかりで、よほどのラグビーファンでもほとんど来ることはない。

 そんなみのりの不審な様子に対して、蓮見は相変わらずの爽やかな笑顔を返した。


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