Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎に出逢えたのは、まさに運命だった。そう思えるほど、遼太郎を愛しく想う気持ちは、生まれてくる前から体と心に刻み込まれていたみたいに自然と溢れてきて、訳もなく止められなかった。
許されないと思っていた恋心だった。ずっと心の中だけで遼太郎を想い続けていこうと思っていたのに、今のみのりは遼太郎なしでは生きていけなくなった。
城跡へ行ったデートの日。夕闇が辺りを包み始めた頃、みのりは遼太郎を家の前まで送っていった。
「それじゃ…。」
と、ほの暗い車の中の消沈した空気の中から、遼太郎が短く密やかに発した。ハンドルを握って、遼太郎がシートベルトを外す動作を見ながら、みのりは小さく頷く。
遼太郎がドアを開け、外へ踏み出そうとした別れ際、
「…じゃあね。……遼ちゃん…。」
みのりは思い切って、もう一度遼太郎をそう呼んだ。
ピクリと体を強ばらせた後、遼太郎は振り返り、表情を硬くしてみのりを凝視した。
『先生にそんなふうに呼ばれると、キスしたくなるから……』
そう言った遼太郎の言葉が脳裏をかすめる。キスの予感にみのりの胸は早鐘のように打ち、顔には一気に血が上ってくる。
しかし、遼太郎は口角をわずかに上げ、その表情にニコリと笑みを含ませると、そのまま車を降りてしまった。