Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「大丈夫。あのお兄ちゃん、ラグビーやってるから、ああ見えてけっこう力があるのよ。」


 男の子をなだめるみのりの言葉をくすぐったく感じながら、遼太郎はハンマーを握りなおした。台を壊して振り抜くくらいの力で叩かなければならないことは、1回目で分かった。チャンスは、あと2回ある…。


 高々と振り上げられたハンマーは、今度は真ん中にジャストミートした。鉄球は勢いよく跳ね上がり、「カン!」と思ったよりも地味な音が鳴った。


――よし…!


と、遼太郎が心の中で拳を握った時、


「やった―――っ!!」


と、手を叩いて大喜びをするみのりの声が響いた。男の子とその母親も、同じように手を叩いて喝采を送ってくれていた。


「来てごらん。」


 遼太郎は手招きして男の子を呼び、好きな景品を選ばせてあげた。男の子が選んだのは、大きな動物のぬいぐるみ。


「ありがとう!」


 男の子はご満悦になり、母親は何度も遼太郎とみのりにお礼を言って頭を下げていた。


 大きなぬいぐるみを抱えて、男の子がメリーゴーランドの方へと走って行く。
 それを見守る遼太郎の眼差しを見上げて、みのりは心が暖かい光で満たされていくのが分かった。

 自分の好きになった人は、本当に強くて優しい人なんだと…。


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