Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
18 祇園祭の夜
また春がやって来て、芳野高校はまた同じ景色に包まれる。
この暖かくのどかな空気も、明るく青い空も、切ないほどの桜吹雪も…、あの春と何も変わらないのに、2年が過ぎた……。
もう2年?それとも、まだ2年…?
この先一生、この想いを抱えて生きていかなければならないのなら、『まだ2年』と言うべきかもしれない。
2年も経てばその想いも風化していき、懐かしく思い出せるようにもなってもいい頃なのに…。
普通の恋なら、今頃きっとそうなっているだろう。
でも、この想いを自覚するのにも、みのりは相当の勇気を要した。この想いを声に出して表現する時には、相当の覚悟をした。だからこそ、忘れ去るどころか、そう簡単に思い出にもなってくれない。
現に今、みのりの目の前には、遼太郎の弟の俊次がいる。
この春から、みのりが担任する2年9組の教室の一席に、彼は毎日座ることになった。しかも、日本史を選択しているので、週に3回ほど授業でも顔を合わせる。
同じ両親の血を分けているとはいえ、体つきといい顔つきといい、彼はあまり遼太郎とは似ていない。
それでも彼を見るたびに、みのりはどうしてもその面影の中に遼太郎を探してしまう。
そして、俊次の目元や笑顔…そこに遼太郎を見つけるたびに、みのりの胸はキュンと切なく痛んだ。