Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
二人が微笑みを交わして歩き出そうとしたとき、ハンマーゴングの係員をしていた女性がみのりへと声をかけた。
「…仲松先生…?」
思いがけないことに、みのりは目を丸くして振り返る。
芳野高校の卒業生かもしれない――。そう勘ぐって、遼太郎は肝を冷やして身を硬くする。みのりはその係員のことをすぐには思い出せず、言葉を逸している。
「山沢商業にいた田端です。」
係員がみのりの記憶を引き出すのに手を貸すと、みのりもそれに呼応した。
「…え?山沢商業…。ああ!田端さん?!」
どうやら、みのりの元教え子らしく、みのりは思いがけない再会に、喜びの表情を輝かせる。
「え、ここで働いてるの?頑張ってるんだね!」
「はい。卒業してから就職した所は、半年くらいで辞めてしまって…。それからは、ここでパートで働いてます。…先生は?今日は…。」
その女の係員は、そう言いながら、遼太郎へと視線を向けた。見据えられて、遼太郎は首をすくめて、みのりを見る。
みのりも遼太郎のことを何と言って説明しようかと、言葉を探してしていると、
「先生の、弟さん…?」
と、係員は訊いてきた。
「ううん。弟じゃない…。」
「…じゃあ?え!?彼氏?って、随分若くない?」
みのりはそれには答えずに、ただニッコリと笑った。係員は、その笑みの意味を解しかねて同じように笑いを作る。