Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
蓮見は勇気を奮い起こして笑顔を作り、みのりに話しかける。
「山鉾の巡行は、何時ごろなんですか?」
「…この辺は、7時半くらいだって言ってました。」
みのりも携帯を開いて時刻を確認しながら、蓮見に答える。
「それじゃ、それまでどこかで食事でもしましょうか。」
「そうですね…。」
みのりもしょうがなく頷いた。
7時半まで、まだずいぶん時間はある。その間、あてどもなく歩き続けるわけにもいかないし、ブラブラしてると人目にも付きやすい。……蓮見と一緒にいるところは、生徒や保護者、その他仕事仲間にも、なるべく見られたくはなかった。
ところが、今夜は曳山の夜だ。あまり気心の知れていない大人の男女二人が、食事をするのに適当だと思えるような所は、やはり予約が必要だった。
その界隈にある小洒落たフレンチレストランや、落ち着けるような日本料理の店を数件訪ねてみたが、どこも断られてしまった。
「ここもダメでした…。すみません。誘っておきながら、店の予約もしてなくて…。」
落胆した声で蓮見が謝るのを聞いても、みのりはお愛想を言って慰めることはしなかった。
しかし、このまま何も食べないわけにはいかないし、この場は地元である自分が、蓮見をもてなす立場にあると思った。