Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…ちょっと、知り合いに当たってみます…。」
みのりはそう言うと、おもむろに歩き始める。蓮見もそれに付いて行くと、ほどなく、蓮見も当然知っている大きくて有名な観光ホテルに行きついた。
ロビーに入って行くと、みのりはフロントではなくコンシェルジュの方へと向かう。そして待つこと数分、今度は旅館の女将らしき人物が姿を現し、丁寧に挨拶を交わすと、みのりは神妙な態度で頼みごとをした。それから、みのりの顔つきが明るくなり、再び丁寧に頭を下げた。
みのりも、願いを聞き遂げてもらって安心したのだろう。少し離れていた所からその様子を見守っていた蓮見に、笑顔で駆け寄ってくる。
浴衣の袖を揺らし…、下駄を鳴らして…。
そのみのりの愛らしい様に、蓮見の中にはキュンと甘酸っぱい感覚が過り、唇を噛んで自分の中にある〝ある決意〟を確かなものにした。
「1階のレストランはやっぱり満席だったんですけど、今日、キャンセルが出たお部屋の方で、食事をさせてくれるそうです。」
みのりからもたらされた嬉しい報告に、思わず蓮見も女将に頭を下げる。
「蓮見と申します。特別なお計らいを、ありがとうございます。」
女将はその蓮見の容姿と物腰に、一瞬見とれて動けなくなったが、すぐに我に返って、にこやかな営業スマイルを見せてくれた。