Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「仲松先生には、この春卒業しましたうちの娘が、本当にお世話になったんです。先生が顧問をなさっている筝曲部でも、クラス担任としても、本当によくして下さいました。」
女将は蓮見のことを、みのりの〝彼氏〟が何かと判断したのか、そう言ってみのりを持ち上げた。蓮見も普段のみのりの様子を知ることができたからか、嬉しそうな顔をして頷いてみせる。
すると、蓮見の笑顔に女将も気を良くして、部屋へと案内してくれながら、さらに新たな話題を持ち出した。
「それに、仲松先生は古文書も読んで下さったんですよ。」
「…古文書?」
これには蓮見も興味を持ち、女将に訊き返す。
「この芳野は江戸時代に天領だったんですが、そのお代官にお出ししたお料理の史料が、東京の食品会社の資料室で見つかったんです。それで、観光の目玉に再現してみようということになって…、仲松先生に解読をお願いしたんです。」
女将の説明を聞きながら、蓮見の記憶の中に、一つの新聞記事が浮かび上がった。
「…そう言えば、うちの新聞の地方欄に、再現された料理の話題が出ていましたね?」
「そうなんです!県民新聞さんにも載せて頂きました!仲松先生も、3年生の担任で本当にお忙しかったのに、ご尽力下さったんですよ。」