Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜




 しかも、蓮見の自分に向けられている気持ちを、みのりは知っている。
 それなりの時が経てば、蓮見の気持ちも薄れ、お見合いしたことも忘れてくれるだろうと、みのりは思っていたのだが、どうやら蓮見の心はそうなってはいないらしい。

 冬にラグビーの試合で会った時の言動も、現に今日こうやって誘われたことも、蓮見の気持ちが変わっていないという証拠だ。


 蓮見の想いが漂うこの空間の、あまりの居心地の悪さに、みのりは逃げ出したくなったが、勇気を出してもうはっきりさせるべきだと思った。

 蓮見とお見合いをしてから、もう2年が経つ。蓮見との結婚について、ゆっくり考えて答えを出すために十分すぎる時間が経った。

 きっと蓮見も、みのりの返事を聞きにはるばる芳野にやって来て、こうやって会う機会を持ったに違いない。


――…でも、今それを言ってはいけない…。


 蓮見が待ち望んでいる答えを、みのりは用意していない。今それを蓮見に伝えてしまっては、もっと気まずい思いをして、ここでの時間をやり過ごさねばならなくなる。


――…とにかくここで食事を済ませて、山鉾の巡行を観て…、別れ際に…。


 部屋に運ばれてくる日本料理の数々は、目も楽しませてくれる。そして予想も裏切らない味も楽しみながら、みのりはそんなことを考えて、決心を固めた。


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