Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 それでも、他愛のない会話を交わす合間に、時折見せてくれる蓮見の柔らかく明るい笑顔を見るたびに、みのりの決心が鈍ってくる…。
 こんなにも優しくて、一片の曇りもない善良な人を、傷つけるようなことをしてもいいのだろうかと…。



 食事が終わって、ホテルから出てきた時は、もう辺りもすっかり暗くなり、山鉾巡行を観るには最適な頃合いになっていた。

 それに連れて、通りの見物客の数も増えて、人を避けながら歩かなければならなり、ややもするとお互いにはぐれてしまいそうになる。普通のカップルならば手でも繋ぐのだろうが、近づきすぎることさえ憚られる二人にとっては、こんな時すごく難しい。


 少し行くと、一段と人が大勢集まっている通りがあり、そのあまりの人の多さに、蓮見の口から思わず疑問が飛び出してくる。


「どうして、ここはこんなに人が多いのでしょうか?」

「…この通りは、二つの町の山鉾が見られる場所だったと思います。」


 みのりがその疑問に答えると、蓮見は『なるほど』と頷いた。


 夜になって幾分涼しくなったとはいえ、この人出の多さもあって、蒸し暑い空気がまとわりついてくる。
 しかし、間もなく笛や鉦のお囃子の音が聞こえてきて、明かりが灯った色とりどりの山鉾が姿を現すと、みのりはその暑ささえも忘れて見入ってしまった。


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