Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「もう少し…、散歩して帰りたいんですが、お付き合いくださいますか?」
蓮見の礼儀正しい申し出に、みのりも頷いた。きちんと気持ちを伝えるには、もう少し落ち着いた場所の方がいい。
二人は、おもむろに並んで歩き出し、この後の展開をあれこれ思い描いて……、お互いがそれぞれに心を決める。
そうやって考え事をして歩いていると、みのりはまた人とぶつかってしまった。そして、そこに思わぬ段差と慣れない下駄。前につんのめって倒れそうになる瞬間、フワリを身体が浮き、それを免れた。
「…大丈夫ですか?」
蓮見の腕が背後から回され、みのりの両腕を
掴んで支えてくれている。度重なる失敗に、みのりは恥ずかしさのあまり顔に血が上り、今度はお礼さえも言えなかった。
そんなみのりに蓮見はほのかに笑いかけたが、意を決するように唇をキュッと引き結ぶと、もう一度みのりの手を握った。
今度は偶然などではなく、意志を持って握られたことに、みのりの眼に戸惑いが過る。
「…人ごみの中では、危ないですから…。」
そんなふうに言われると、転びそうになるのを助けてもらった手前、みのりもこの手をむやみに振り払うことができなくなる。しょうがなく、そのまま蓮見に手を引かれ、黙って歩き始めた。