Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
手を繋いで歩くかたちになってしまい、傍目で見るときっと恋人同士に見えるだろう。それでなくても、際立っているこの二人の容姿は、周りをそぞろ歩く人々の目を引いた。
ドキドキと心臓が不穏にざわめいてくる…。どこを歩いているのか分からなくなるほど、意識は握られている左手にしかなかった。
気が付くと、見物客の多い大通りを抜け、露店もなく人も少ない川沿いの道を歩いていた。
祭りの楽しげな喧騒が遠のき、河原の草むらからは夏虫たちの清かな鳴き声が聞こえ、川を渡る風が吹いて、ここは少しだけ暑さも和らいでいる。
「……あの、蓮見さん。…もう、人ごみは抜けましたから…。」
みのりはそう声をかけて、握られている左手を解放してくれるように促した。
蓮見は立ち止まり、薄明かりの中で、みのりに視線を合わせたが、みのりの意図を解してくれていないようだ。
「…もう、大丈夫ですから、手を…。」
今度はみのりもはっきり言ったつもりだったのだが、蓮見は手を離してくれるどころか、しっかりと握りなおした。
その力の強さに、みのりの心臓が跳び上がる。驚いた目で蓮見を見上げると、その目は蓮見の真剣な目に射抜かれた。
先ほどの優しい眼差しとは違う力を持った視線に、みのりはもう何も言えなくなり、自分の体の芯が震えはじめるのを感じた。