Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「この手を…、ずっと僕が握っていてはいけませんか?」
この言葉の奥にある本当の意味に、みのりは気づきたくなかった。出来ることならそれに気づくことなく、この場をやり過ごしたかった。
しかし、思いも寄らなかった蓮見の言動に、何も言葉が出て来ず、体の自由も利かなくなる。
「僕とずっと…、こうやって手を携えて生きていってくれませんか?」
蓮見はみのりに向き直り、みのりの右手も取ってしっかりと両手で握りなおす。蓮見の手は思ったよりも大きくて、みのりの両手は蓮見のそれにすっぽりと包み込まれた。
「僕と、結婚してください。」
みのりの目を見て、はっきりと伝えられた蓮見の声。
もう聞こえないふりも、意味を取り違えるふりもできず、みのりには逃げ込む場所もなくなってしまった。
でも今こそ、目の前の蓮見と同じように、自分も勇気を出すべきだと思った。
「……結婚は…、できません。」
蓮見から目を逸らし、俯いたみのりから発せられたこの答えに、蓮見はしばし消沈した。
しかし、これまでのみのりの態度からも、蓮見の中でそれは想定していたことだった。みのりの手を握る両手に力を込め、もう一歩その先へと踏み出した。