Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 蓮見のような人間に、ここまで思ってもらえることは、とてもありがたいとは思う。けれどもみのりの心は、ほのかなときめきを感じる隙間もないほど、遼太郎の影で覆い尽くされていた。


「……だけど、私は、今のこんな気持ちでは、蓮見さんのお嫁さんにはなれません。」


 みのりはそう言って、首を横に振ることしかできない。


 泣きながら苦しそうな表情を見せるみのりを、蓮見は優しく切ない眼差しで見つめ続ける。


「解ってます。でも僕は、みのりさんと一緒にいられるためだったら、そんな気持ちも全て受け留めます。みのりさんが僕とのことを考えられるようになるまで……いつまでも、何年でも待ちます。」


 蓮見の心からの言葉は、みのりの心に深い楔となって打ち付けられた。

 この場をどうやって乗り切ればいいのか分からずに、思ってもみない言葉が、みのりの口を衝いて出てくる。


「……ダメです。そんな、バカなこと……。」


「僕はバカかもしれません。……でも、本気です。」


 両手に込められた力と、真剣な眼。
 胸の鼓動がドキンドキンと激しく乱れるばかりで、みのりの心も体も固まってしまって動けない。

 もう今のみのりには、この蓮見の想いを覆せるだけのものを、何も見いだせなかった。


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