Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
19 さまよう心
――…また、逃げてしまった……。
ほとんど眠らずに朝を迎え、カーテンを開けて、みのりはため息を吐いた。
これまで、みのりは何度も逃げ続けてきた。別れを決めた後の石原からも、夏休みに学校にやってきた遼太郎からも…。
自分にかけられる真剣な想いと対峙するのが、怖くて怖くて…。
そして、昨夜は蓮見からも逃げ帰ってきた。
結局自分は、真剣な想いときちんと向き合えず、自分の想いさえもうやむやにして伝えられない〝卑怯な女〟なのだ。
タクシーに乗ってアパートに帰り着いた時は洋服を着てたので、途中で浴衣を返しに寄ったとは思うのだが…、あれからのことはよく覚えていない。
それほど混乱して、動転していたということだ。
逃げても、この心にわだかまることの解決にはならないと、みのり自身よく解っている。昨日だって、蓮見にきちんと断るつもりで会っていたのだから、逃げたりせずに『待っていても無駄だ』と断言すべきだったのだ。
でも、あの蓮見の眼差しの深さ、信念に裏付けられた言葉の力強さを思い出すと…、体が震える。
抱きしめられたり、キスされたりしていたわけではないのに、静かな物言いの中から波動のように伝わってくる蓮見の熱情に、全身が締め上げられて、もう窒息してしまいそうだった。
あの場から逃げ出さないと……、あのまま蓮見の想いに流されて、頷いてしまいそうだった。