Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
――…これは仕事なんだから。しっかりしろ……!!
みのりはそんな風に自分に喝を入れ、手の震えをグッと抑え込んでインターホンのボタンを押した。
前もって約束していたこともあって、俊次の母親は、すぐに玄関口に出てきた。
俊次の母親は、当然のことながら、みのりの記憶にある遼太郎の母親その人だった。みのりを切なくさせるその目元に、笑みを漂わせて迎え入れてくれる。
庭を望む大きな窓のあるリビングに通されて、そこにあるソファーに腰かけながら、
「お夕食の時間に、申し訳ありません。」
ダイニングの方でお茶の準備をしてくれている母親に声をかけた。
「いいえ、先生の方がお忙しいのに、こちらの都合に合わせて頂いて、ありがとうございました。」
そう言いながら、母親はテーブルの上に麦茶を出し、みのりの斜向かいに腰を下ろした。
「俊次くんは、部活ですか?」
「ええ、そうなんです。そろそろ帰ってくるはずだと思いますけど。…ホント、部活ばかりで、勉強の方はすっかりで…。」
母親の優しい微笑みが苦くなる。それに釣られて、みのりも軽く息をもらした。
「それでも、入学当初は『どの部活もやらない』と俊次くんは言ってましたから、部活に打ち込んでくれるだけでも、学校生活は充実していると思います。」