Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……みのりちゃん。みのりちゃんは、どうなんだよ?…どうして遼ちゃんと別れた?」
投げかけられた二俣の言葉は、雷のようにみのりを貫き、みのりは直立したままどうにも動けなくなる。二俣へ向ける眼差しには恐れが宿り、優しい教師のものではなくなった。
『どうして?』と訊かれても、簡単には言い表せない。あの時は、そうしなければならないという思いに囚われていた。
「……それは、狩野くんのために……。この街を出て行く狩野くんを、自由にしてあげなきゃ…って思って……。」
それは、遼太郎と別れてしまった哀しみをなだめるために、何度も自分に言い聞かせてきた一番正当な理由だった。
しかし、みのりの声は震え、それはまるで言い訳のように二俣の耳には聞こえた。
二俣の大きな目に見据えられて、みのりは落ち着かなげにブラウスの裾を握った。
「『自由』ってなんだよ?別れることで遼ちゃんが『自由』になったと、みのりちゃんは思ってるかもしれないけど、同時に遼ちゃんは『希望』を失ったんだぜ?」
二俣の言葉が、追い打ちをかけるように胸に突き刺さる。息が苦しくなってきて、嗚咽が喉元にこみ上げてくる。
「……希望のない人間が自由になれたって、その自由に何の意味があるよ?」