Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 佐山を待っていることになったのはいいが、これと言って何もすることがなく、手持ち無沙汰になってしまった。
 樫原はゼミ室のパソコンで、沖縄の観光名所などを調べていたが、遼太郎はこの時間を利用して図書館に行くことにした。


 また後でゼミ室で落ち合うことにしようとしたのに、樫原はパソコンの電源も落とさずに遼太郎を追いかけてきた。

 樫原が遼太郎にまとわりついて気を引こうとするのはいつものことだが、3年に上がってゼミの後輩が出来た頃から、その態度はいっそう顕著になった。


「狩野くん、よく図書館に行くけど、図書館で何してるの?」


 樫原にとっては素朴な疑問なのだろう。図書館ですることと言えば、だいたい想像がつくはずだが、こんなことを訊いてくるあたり、情報通の樫原でも図書館にはあまり行かないらしい。


「図書館で本を読むに決まってるじゃないか。それに、いろんな新聞もあるだろ?」

「ふーん、新聞をわざわざ読まなきゃいけない?ネットでも十分情報は入ってくると思うけど?」

「うーん…。新聞を読み慣れるまでは俺もそう思ってたけど。ネットと新聞じゃ違うよ。新聞は限られた紙面の中で、情報が凝縮されてる感じがするんだ。俺、教職取ってるだろ?もし将来公民科の先生になったら、やっぱ色んなことを知っておかなきゃいけないし。色んな情報をまんべんなく蓄えておきたいんだ。」


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