Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
明治神宮の〝くじ〟は、いわゆる一般的な〝おみくじ〟ではなく、そこに運勢なんて書いていない。けれども、陽菜は、
「…そうですよね。狩野さんがそう言うなら、私も今度からそう思うことにしよっと。」
と、敢えて遼太郎を肯定するように、ニッコリと表情を和ませた。
陽菜のこの受け答えは、遼太郎を慕っていればこそ出てくるものだったが、既にそこに意識のない遼太郎は、陽菜の言葉を軽く聞き流した。
「……というより、ここに来たのは、お参りするためじゃなくて、他に目的があるんだ。」
「……?」
陽菜は笑顔を疑問の色に塗り替え、首をかしげて遼太郎を見上げる。
その仕草に、今度は遼太郎の感覚が一瞬ピクリと反応した。この自分を落ち着かなくさせる感覚は、陽菜とあまり一緒にいたくない理由の一つだった。
「ここには森を見に来たんだ。ここから『神宮の森』を巡って、北池の方まで行ってみようと思ってるんだけど。」
「…は。もり?」
遼太郎の思惑は、本当に思いがけなかったみたいで、陽菜は口をぽかんと開けて瞬きをしていたが、すぐに気を取り直した。
「たまには、森林浴しながら散歩するのもいいですよね!」
そう言いながら、陽菜は異を唱えることもなく、遼太郎の後を付いてきた。