Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
普段の遼太郎を観察して、陽菜は勝手に〝硬派で女には興味がない〟人物像を作り上げていた。強い押しで迫っていけば、優しい遼太郎はすんなり心を開いて、自分を受け入れてくれると思い込んでいた。
でも、どうやらそうではなかったようだ。
向かいに座って楽しくなさそうにスパゲッティを食べる遼太郎を見て、陽菜は落胆した。遼太郎と親しくなるために、数か月かけて練った計画は、成功とは言えないみたいだ。
陽菜の売りである〝ポジティブさ〟もさすがに鳴りを潜めて、もう遼太郎にかける言葉さえ見つからない。
内心溜息を吐きながら、陽菜が食事を食べ終わる頃、店員が可愛らしく美味しそうなデザートプレートと飲み物を陽菜の前に置いた。
「…え?私、デザートは頼んでませんけど。」
反射的に、陽菜が店員に声をかける。すると、先に食後のコーヒーを飲んでいた遼太郎が、それを遮った。
「俺が頼んでおいたんだよ。君が頼んだメニューだけじゃ、到底チケット代には足りなかったから。」
遼太郎が思ってもみなかった気遣いをしてくれたことに、陽菜の表情が感激で活き返る。
「ありがとうございます…!」
「…いや、俺の方こそありがとう。オールブラックスの試合を観ることが出来て、本当に感謝してる。それに、明治神宮も付き合わせてしまって…、ずいぶん歩いたから疲れただろう?」