Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
そして、遼太郎からのそんな優しい言葉は、しおれていた陽菜の心に甘い雨となって降り注いだ。
ケーキにシャーベットにフルーツ、デザートの盛り合わせを食べながら、自分の中にやる気と勇気が充填されていくのが分かる。
陽菜は、まだ諦めるわけにはいかなかった。まだ何も、きちんと言葉にして、遼太郎に意思表示をしていないのだから。
店を出て駅まで向かう短い道のりの間に、かねてより心に決めていた計画の最後のミッションを遂行しようと、陽菜は勇気を振り絞って思い切ってみた。
「…今日は、狩野さんを騙すようなことをして、すみませんでした…。でも、私がどうして、嘘を吐いてまで狩野さんを誘い出したのか、狩野さんには解りますか…?」
並んで歩いている陽菜からそう問いかけられて、遼太郎はチラリと陽菜を一瞥した。
陽菜から恋愛感情を持たれている――。
それは、遼太郎自身も気づきたくないことだった。出来ることなら、こんな話はせずに、このまま今日は別れたかった。
遼太郎は、陽菜にも聞こえるほどのため息をついてから、苦みを含んだ面持ちで口を開いた。
「解るよ。……だけど、その気持ちには応えられない。さっきも言ったはずだ。『好きな人』がいるって…。」
「…でも、その人は『彼女だった』って…。今は付き合ってないんですよね?別れたのに、忘れられないってことですか?」