Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
陽菜はいつも遼太郎の側にいたがる…。
このバスに乗り込むときも、陽菜は女の子同士で座るよりも、すかさず遼太郎の隣に座ろうとした。しかし、遼太郎もさすがにそれは避けようと、場所を移して樫原の隣へとやって来る。
皆の気付かないところで繰り広げられている二人のこんな駆け引きを、樫原は何度も目撃していた。
いつの間にか自分たちの間に入り込んでいた陽菜にも強い違和感があり、空気を読んで楽しそうに会話はするけれども、樫原は決して陽菜に心を許していなかった。
空港を出たバスは、一路山間地へと向かう。
一行が最初に訪れたのは、バイオマス発電所。バイオマスといってもいろんな種類があり、間伐材などの木質資源や下水汚泥や生ごみなど、動植物から生まれた再生可能な有機性資源を総称して言われる。
陽菜が見つけだしたこの場所には、木材を燃焼させての発電所と生ごみなどから発生するメタンガスを燃焼させての発電所とが、同じ市域の中に存在する。
これら2か所を廻って初日の行程は終わり、宿舎に着いて夕食や入浴の後は、夜遅くまで4年生による卒論の中間発表が行われる。
担当教官の人柄もあって、学部の中でも真面目で知られるこのゼミでは、毎夜〝宴会〟が行われるようなことはなかった。
次の日は、やはり同じ市内にある風力発電所に赴いた。山々の尾根沿いに20基ほどの風車が点在する景色を眺望する。