Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「うわ―…。陽菜ちゃん。…可愛いなぁ~。」
という佐山の感嘆を側で聞きながら、遼太郎は特に何の関心も示さず波打ち際へと向かう。
そんな遼太郎の姿をチラチラと確かめていたのは樫原だけでなく、ゼミの女子たちだ。
「すごく、キレイなカラダ…。」
ラグビーをして鍛えた筋肉、けれどもラグビーをやめてからは余分な筋肉も落ちて、均整のとれた上半身。その美術品のような遼太郎の身体を見て、女子たちはため息交じりにそう囁き合った。
繰り返す波の動きを楽しみながら、ひとしきり泳いだ遼太郎は、仰向けになって浮かび、青い夏の空を見上げた。
奇声が聞こえてチラリとそちらを見遣ると、ゼミの女の子たちがビーチバレーをしているようだ。
その中の陽菜に目が留まり、思わず遼太郎はつぶやく。
「…アレが、可愛いのか…?」
それは佐山の言葉を受けての、遼太郎の素直な疑問だった。
陽菜の顔は目が大きく、鼻も口も形がよく整っている。弾けるように屈託なく笑ったら輝くようで、それはそれで可愛いんだろうということは、遼太郎だって否定しない。
けれども、遼太郎の中にはいつも、何においても超越した確かな存在がある。