Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
まだ当分は今のままの状態で、こんな陽菜の存在を否定しないでおこうと思う。
〝彼女〟として付き合うつもりは、もちろんない。深入りさせるつもりも、更々ない。けれども、陽菜が同じゼミにいて、このまま側にいることを避けられないのなら、それはみのりから出された〝宿題〟をもう一度やってみるようなものだ。
「あ、ほら、狩野さん!こっちに、関連する本置いてますよ!!」
陽菜は早速それを見つけて、遼太郎に向かって手招きする。遼太郎も素直にそれに応じて、数々の本が並ぶその部屋へと向かった。
ミュージアムグッズの販売を行っている室内の半分ほどを使って、企画展示の図録やそれに関連する本の販売が行われている。人もまばらな展示室よりも、こちらの方が人が多く盛況のようだった。
並べられている本を一通り見渡すと、その中の一冊が際立って遼太郎の目の中に飛び込んできた。
『環境の日本史』
思わずその本がある所へ歩み寄って、見覚えのあるそれを手に取ってみる。
「あ、その本!今日の展示のこと、書いてそうですね。」
遼太郎の腕に頭を付けて、陽菜が覗き込んでくる。
そのあまりの近さに、ピクリと遼太郎は反応したが、敢えて陽菜を振り払うようなことはせず、懐かしい本をペラペラとめくってみた。