Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
これ以上思い出に浸ってしまうと、普段の平静な自分ではいられなくなる……。
そう思った遼太郎は、息苦しさを紛らわせるように本を閉じて、元の場所へと戻した。
すると、それを待っていたかのように、陽菜が遼太郎の腕を抱えるようにして引っ張った。
「あっちにも、それっぽい本がありますよ!」
けれどもその時、視界に入ってきた白く細い腕が、なぜか遼太郎の目に留まる。
その腕は、まるでスローモーションのようにふわりと動いて……、たった今遼太郎が置いたばかりの本を手に取った。
腕を見ただけなのに、ドキッと胸が反応し、デジャヴのような不思議な感覚が遼太郎を襲った。
釘付けになった視線は導かれるようにその腕をたどって、その人物を確かめる。
その腕の持ち主も、遼太郎のことを感じ取ったらしく、同じような趣きで遼太郎へと視線を投げかけた。
視線がぶつかった瞬間、遼太郎の呼吸が止まり、感覚も記憶も全てがなくなった。