Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「仲松先生が行くことになったって、僕の方から連絡しておくね」


 吉成先生はそう言ってくれていたが、それはみのりの耳には既に入っていなかった。ただ書類を見つめたまま、ドキンドキンと胸が激しく鼓動を打っていた。


 東京へ行ったからといって、遼太郎に会えるわけではない。けれども、近くに行けると思っただけで、こんなにも胸が切なく痛みを帯びる。

 そして、このことはこの日から、みのりにひとつの悩み事をもたらした。


 二俣から送られてきたあのメール。そこに書かれていた遼太郎の住所。あの場所に行けば、きっと遼太郎には会える……。

 遼太郎に再会して、以前のように抱きしめてもらえることを思い描いただけで、みのりの心も体も震える。反面、みのりが危惧したように、遼太郎には今はもう彼女もいて、自分のことなど忘れてしまっているかもしれない。

 会いに行ってもいいだろうか……。今更会いに行ったら迷惑だろうか……。何よりも、未来へ向かって歩んでいる遼太郎の妨げになるのではないだろうか……。


 うつうつと悩んでいる間にも、研究会の日はどんどん近づいてくる。そんな日々を過ごしていた時のことだった。


「みのりちゃん!」


 放課後の職員室で、みのりは愛から声をかけられた。3年の教師のもとに、勉強のことで質問に来ていたらしい。


< 555 / 775 >

この作品をシェア

pagetop