Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「私は、何もしてないわ」


 そう言ってみのりが柔らかく微笑むと、愛はそれに後押しされるように、自分の中にある決意を口にした。


「……みのりちゃん。私ね、花園の予選が終わると引退でしょ?だから、そのときアイツに言おうと思ってるの」


 それを聞いても、みのりはピンと来なかった。愛が何のことを言っているのか分からず、首をかしげる。


「……その、アイツのこと、好きかもしれないって」


 恥ずかしそうに宣言する愛の言葉を聞いて、みのりはもっと首をかしげた。


「……『かもしれない』?」

「だって……!自分でもよく分かんないんだもん!……でも、言っておかなきゃって、思って……」


――それはもう、「好き」っていうことなのよ。


 みのりは心の中でそう思ってしまったが、口には出さなかった。もう一度柔らかい微笑みで、愛を包み込む。
 すると、今度は愛の方が、みのりに問いかけた。


「みのりちゃんは、どうするの?好きな人のこと。みのりちゃんは、ずっと今のまま一人でいるの?」


 思いがけないことを聞かれて、みのりは思わず息を呑んだ。みのりの身に起こっていることのすべてを、愛に見透かされているような気持ちになった。


「私は……」


 少しの焦りを伴って、言葉を詰まらせるみのりに、今度は愛の方がアドバイスする。


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