Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「みのりちゃんって、人の恋愛のことはよく分かってるのに、自分のことになると臆病なんだね。でも、私。みのりちゃんには幸せになってほしい。勇気を出してみて、ダメならダメでいいじゃない。引きずってると新しい一歩も踏み出せないし、幸せにもなれないと思う」
愛の言っていることは、真実をついていた。同時にみのりの胸をも貫いて、押し込めていた迷いが再燃する。
「そうね……」
みのりは笑顔を作って、一言そう答えた。けれども、その心を映して、笑顔を保つことはできなかった。表情をこわばらせて唇を噛むみのりを、愛は覗き込んだ。
「……みのりちゃん……?」
愛に見られまいとみのりは顔を逸らしたが、その瞬間に、張り詰めていたものが切れてしまった。自分を制御できずに、涙がこぼれ出た。
放課後の渡り廊下で、こんなふうに泣いてしまったら、まだ大勢行き来している生徒たちに見られてしまう……。それなのに涙が止められず、みのりは本当に情けなくて、教師失格だと思った。
その涙を見て、愛は言葉を逸する。みのりの背中に手を当てて、行き交う生徒たちに背を向けるように、ふたりで窓の方を向く。
「みのりちゃん?どうしたの?……話してみて?何にも分かってない私なんかが、役に立てるかどうか分かんないけど……。」