Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
コールが途切れて、また電話をかけ直す。それを繰り返すにつれて、遼太郎の中の暗い不安が膨れ上がっていく。
結局、何度か電話をかけてみても、みのりはそれには出なかった。
着信に気づいていないのか……。それとも、着信者の名前を見て、それに敢えて出ようとしないのか……。
ドキンドキンと、焦りと不安で激しく脈打つ胸の鼓動。遼太郎はわななく指を動かして、みのりへとメールを打った。
『時間があれば、先生と二人きりで話がしたいです。』
思い切って〝送信〟をタップして、そのまましばらく待ってみる……。だけど、スマホはなんの反応もしてくれなかった。
『プロポーズはされてるのよ。』
先ほど聞いたみのりの言葉を思い出して、遼太郎の体には震えが走り、思わず夜の街の中で立ち尽くした。
もう、大学を卒業するまで待っていられない。
今の自分が独り立ちをしているとか、みのりに見合う人間に成長しているか、なんて関係なかった。今、みのり引き止めておかないと、どんなに想い焦がれても一生手の届かない人になってしまう。
でも、こうやって気持ちばかりが先走って焦っても、遼太郎はもう、みのりがどこにいるのか分からない。東京というこの大きすぎる街の中に、紛れてしまったみのりを、見つける術はなかった。