Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
――さっきまで、あんなに近くにいたのに……。
「……俺、何やってんだ……。」
遼太郎の唇の端から、後悔がにじみ出る。
状況に流されてしまって、決断力や行動力を持てなかった自分が、本当に情けなくて腹立たしい。
どんな手段を使ってでもみのりと二人きりになって、この腕に抱きしめられたなら、みのりも想いが通じ合っていた頃の気持ちを思い出してくれていたかもしれない。
でも、みのりはいなくなってしまった。
やるせなさと焦りを抱えながら、遼太郎の足を向ける先は自分のアパートの部屋しかなった。
遼太郎と陽菜に別れを告げて、みのりは、人が行き交う街を行く当てもなくさまよった。
本当は、友達と会う約束なんてしていない。口から出まかせの嘘でもなんでも言って、一刻も早く少しでも遠くに、あの初々しく幸せそうなカップルから離れてしまいたかった。
それでも、振り返って、遼太郎がやっぱり追いかけて来ていないことを確かめると、絶望にキュッと胸がきしむ。
――私は、遼ちゃんの〝いい先生〟を演じられた?もう、本当の私に戻ってもいい?
そう思った瞬間、辛うじて平静を保っていたみのりの心の堰が崩壊した。それとともに、みのりの両方の目から無数の涙の粒がこぼれて落ちる。