Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
23 遼太郎のアパート
前もって予約していたホテルにたどり着き、そこの部屋に入って、みのりは無意識に携帯電話を確かめた。
……すると、遼太郎からの着信が五件ほどと、メールが一件送られて来ていた。雑踏の中、バッグに入れられていたためか、その着信音は全くみのりの耳に届いていなかった。
恐る恐る指を動かして、メールを開いてみる……。
『時間があれば、先生と二人きりで話がしたいです。』
その文面を読んだ途端、また想いが込み上げてきて、胸が張り裂けそうになる。
落ち着いていた涙がまた零れて落ちて、みのりは携帯を閉じ、両手で顔を覆ってベッドへ座り込んだ。目を閉じ唇を噛んで、切なく苦しい感情の波が通り過ぎて行ってくれるのを待つ。
遼太郎は、何を思ってこんなメールを送ってきたのだろう……。二人きりで何を話したいと言うのだろう……。
嫌いになったり、憎み合って別れたわけではない。遼太郎にもまだ想いが残っているのかもしれない。
もし今、遼太郎へと折り返しの連絡をしたならば、遼太郎はここまで駆け付けてきてくれるかもしれない。そして、二人きりになれるこの空間の中で、離れ離れになっていた時間など忘れて、抱きしめ合ってキスをして……。
みのりは顔を上げて、ベッドサイドの棚の上に携帯電話があることを確かめた。衝動のままに腕を伸ばそうとした瞬間に、みのりの理性がそれを食い止めた。