Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎に陽菜を裏切らせてはならない。遼太郎の側にいて、あんなに楽しそうに笑っている陽菜を、悲しませてはならない。
 今日は少し不機嫌そうだった遼太郎も、きっと自分という〝邪魔者〟がいなければ、いつもは陽菜と楽しく過ごしているのだろう。


 今の自分は、遼太郎の幸せに支障を与える不必要な存在だ。もう二度と遼太郎の前に姿を現してはならない。いつまでも、この叶わない想いを引きずっていてはいけない。


『好きでいることを止めちゃうと、きっとみのりちゃんがみのりちゃんでなくなっちゃうよ』


 東京に来る前に愛が言っていたように、心の中から遼太郎への想いがなくなってしまうと、自分が自分でなくなってしまいそうだ。
 ……だけど、だからこそ、今の自分ではない新しい自分になれる。


 新しい自分になるために……、どうしたら自分の中に深く刻まれたこの想いを、自分から切り離せるのだろう。


「……これから、私はどうすればいいの……?」



 とめどなく流れて出てくる涙をぬぐいながら、みのりは呟く。考えても考えても答えは出てきてくれず、ついには何も考えられなくなる。
 ベッドの上に仰向けになり、ランプがほのかに照らす天井を、ぼんやりとして見上げた。


 さっきの店でつまづいたとき、支えてくれた遼太郎の腕の力強さが、まだみのりの体に残っている。

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