Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
『遼ちゃん……』
そう呼んでくれていた頃の感情が、もうみのりの中に存在しなくなっているのかもしれない。……それでも、まだできることはある。
この腕に抱きしめてキスを交わした時の感覚は、まだみのりの中にも残っているはずだ。教師と生徒という立場を超えて想い合えたことは、そんな簡単に消えてしまうことではないはずだ。
――先生を、取り戻す……!!
唇をキュッと噛みながら、決意を固め、遼太郎はスマホを取り出した。みのりへ連絡をするのではない。飛行機の予約をするためだ。
みのりは陽菜のことを、遼太郎の〝彼女〟だと思い込んでいたようだ。その仲を壊さないためにも、今日以上の接触は避けようとするだろう。電話やメールで連絡をしても、きっと居所を教えてはくれない。
だったら、みのりの住む芳野へと先回りして、みのりのアパートの前で待っているしかない。もしみのりが引っ越しをしていたら、芳野高校へ行くつもりだった。ストーカーじみた行為だと思われてしまうかもしれないけれど、それでも構わないと遼太郎は思った。
とにかく今は、どんな手段を使ってもみのりに会って、二人きりで話をしなければならない。この次に帰省する正月まで待ってはいられなかった。今、行動しなければ、一生後悔してしまうかもしれない。