Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
飛行機に乗る必要のなくなった遼太郎は、忘れてしまわないうちに予約の取り消しをしていた。
キャンセルの手続きが終わって遼太郎が顔をあげると、みのりはとっさに目を逸らして、部屋の中を見回しているふりをした。
「先生、なに飲みますか?」
ぎこちないみのりに向かって、遼太郎が声をかける。
「……お水以外に、何かあるの?」
ぎこちなさをごまかすように、みのりが冗談めかして返すと、遼太郎も面白そうに息を抜いた。
「ありますよ。先生の好きなカフェラテは無理だけど、コーヒーでいいですか?」
「コーヒーって、狩野くんが淹れるの?それとも、インスタント?」
「先生にインスタントなんて。ちゃんとしたコーヒーを、もちろん、俺が淹れるんです。」
それを聞いて、みのりは目を丸くする。
「ええっ?!狩野くんが!?ホントにできるの?」
「いつまでも俺を、高校生のままだと思ってもらっちゃ困ります。美味しいの、淹れてあげます。」
「そっか、もう子どもじゃないもんね。」
みのりが柔らかく微笑むと、遼太郎もそれを見て安心したようにキッチンに立った。
「と言っても、一杯ずつ淹れる市販のドリップパックですけど。」
おどけるように遼太郎がそう言うと、みのりは可笑しそうに声を立てて笑った。遼太郎もつられて、明るい笑顔になる。