Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「俊次くんは、狩野くんと一緒で、とても努力家ね。ラグビーだけじゃなくて、勉強もとても頑張ってるのよ。」
遼太郎がためらっている間に、みのりの口からまた〝俊次〟のことが話題にのぼる。
「先生のおかげだって、家で聞いてます。」
「家じゃ、どんなふうなの?やっぱり、意地っ張りで口が悪い?」
真実をついているみのりの物言いに、思わず遼太郎は笑いを漏らしてしまう。
「家じゃ、確かに意地っ張りですけど、末っ子だから甘えん坊ですね。」
「あ、確かに。分かる分かる。俊次くんのツンツン言葉は、甘えたい裏返しなのよね。」
そう言いながらみのりも笑って、楽しそうな雰囲気を作ってくれている。
それからひとしきり、俊次の成績のこと俊次のラグビーのことと、みのりから振られる俊次の話題で会話は続いた。みのりのおしゃべりは確かに軽快なものだったけれど、遼太郎は心からそれを楽しめなかった。
こんなどうでもいいような俊次の話をしている限り、みのりは〝先生〟の領域から出てきてくれない。
「狩野くんは、高校生のときはラグビーを頑張ってたけど、今は何に頑張ってるの?サークルは?もう三年生だから、引退してるのかな?」
これも卒業生に対する、ありきたりな〝先生〟らしい質問だった。遼太郎はもどかしい思いを抱えながら、質問に答えるしかない。