Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「サークルは入学したての頃に入り損ねて、結局どこにも入らなかったんです。今頑張ってることは……。」
――いつも、先生にふさわしい大人になるために、頑張っています。
その答えが頭にはよぎったけれど、口から出てきた答えは違うものだった。
「……やっぱり、ゼミでの勉強と、就職活動……です。」
そう答えながら、自分の意気地のなさに遼太郎は落胆する。だけど、みのりの態度も表情も声色も、遼太郎が取りつく島もないほど、〝先生〟というシールドで完璧に覆い尽くされていた。
みのりは、質問に答えてくれる遼太郎を、ジッと見つめながら、しみじみと何度も頷いた。
「教職は?取ってないの?」
「一応、取ってます。来年、芳野高校に実習に行く予定にしてます。」
「そうなんだ!でも来年は、私はもう異動してるだろうから、芳野にはいないわね。」
ドキンと遼太郎の心臓が、一つ大きく脈打った。どんどんみのりが遠くなっていくような気がして、焦りがいっそう募っていく。
今日なんとかしなければ、もう〝次〟なんてない。再びこうやってみのりと話せる機会は、いつになるか分からない。
その心の内の焦りとは裏腹に、他愛のない話に時折笑って相づちを打つ遼太郎。
少し大人びて、でも高校生の頃と変わらず優しい遼太郎の表情を、みのりは自分の心に刻みつけた。