Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
思ってみなかったことを遼太郎から告げられて、みのりは言葉を潰えさせた。戸惑うように視線を向けているみのりの目を捉えて、遼太郎は言葉を付け足した。
「きちんと彼女を作って、女の人と付き合ってみるのも『宿題』だって。」
みのりの顔色が変わり、戸惑いはいっそう濃くなった。
それとともに、みのりの脳裏にあの春の日のことが甦ってくる。たしかにみのりはあの日、そうすることを〝宿題〟だと遼太郎に言った。それは、自分に固執する遼太郎を解き放してあげるために、借りてきたような言葉だった。
でも、素直な遼太郎はその言葉を忠実に守って、きちんと〝宿題〟に取り組んだのだ。
「宿題だったから彼女を作ったの?……それじゃ、好きでもない子と付き合ったってこと?!」
「そうです。」
きっぱりとそう言い切る遼太郎の答えを聞いて、みのりは思わず大きく開けられた口を両手で覆った。
「そんなことしたら、相手の女の子をずいぶん傷つけたでしょう?……どうしてそんなバカなこと……。」
そう話しながら、みのりの中に罪悪感が募ってくる。方便として使った言葉が、遼太郎を振り回して、とんでもなく不実なことをさせてしまった。