Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「バカなことだろうがなんだろうが、大学を卒業して先生に会いに行くために、『宿題』をしておくことは、必要条件だと思ってました。先生が認めてくれる大人になって、もう一度先生の恋人にしてもらおうと思っていました。」
遼太郎のあまりにも健気な心を知って、みのりはもう何も言えなくなる。遼太郎を見上げたまま、自分の中にせり上がってくる愛しさに、今にも呑み込まれそうになる。
「……先生の、今の気持ちを聞かせてください。」
囁かれた遼太郎の言葉を聞いて、本当の気持ちが口を衝いて出てきそうになった。
だけど、今の遼太郎の側には、陽菜がいる。こんな十二歳も年上の自分よりも、彼女の方がずっと遼太郎にふさわしい。きっと彼女と生きていく方が、苦労も少なく幸せになれる。
「言ったでしょう?プロポーズされてるって。私も、新しい別の人生を踏み出そうとしているの。だから、狩野くんも、いつまでもこんな私のことにこだわってちゃダメよ。陽菜ちゃんは歳も近いし、きっと楽しくやれるわ。」
みのりは遼太郎から目を逸らして、足元を見つめながら、また遼太郎を突き放した。
あまりの切なさに心が悲鳴を上げて、唇を噛みしめて我慢しているのに、涙が浮かんでくる。この涙が溢れだしてくる前に、遼太郎の前から姿を消してしまいたかった。