Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
二年半もの間、ずっと想い続けた人。
その存在を確かめるように、遼太郎はギュッとその腕に力を込めて、懐深くにみのりを抱き込んだ。
強くて優しい、昔と変わらない遼太郎の抱擁。
遼太郎に包み込まれて、みのりの激しい胸の痛みも穏やかに鎮まっていく。遼太郎を想う切なさはいっそう増して、涙はもっと溢れ出てくる。
遼太郎に抱きしめられながら、みのりはしばらくその胸で涙を拭い続けた。そんなみのりに、幾分冷静になった遼太郎が優しく囁きかける。
「俺が好きなのは、ずっと先生だけです。どんな人に出会っても、どんなに想ってもらっても、結局誰にも先生に対するような感情は抱けなかった。」
遼太郎は別れたときと同じ心で、今でも想ってくれている。それを語る遼太郎の言葉が、涸れていたみのりのすべてを瞬く間に潤していく。
遼太郎が語ってくれたように、みのりも本当の気持ちを表現する時だと思った。だけど、自分の心に素直になればなるほど、浮き彫りになってくる怖さがある。
「でも、これからだって……。就職したらまた世界が拓けるし、そこには十二歳も年上の私なんかよりもずっと、素敵な人がきっといるわ……。」
腕の中で俯(うつむ)くみのりを、遼太郎は抱擁を緩めて覗き込んだ。それから、きちんと自分の気持ちを伝えるために、もう一度みのりの両腕を掴んで、正面からしっかりと向き直った。