Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
浮かんできた涙で瞳を潤ませながら、みのりは微かに震えていた。昂っていた遼太郎も、それを見て表情を緩め、少し恥ずかしそうに笑ってみせる。
「キスだって、先生としかしたことないのに。こんなことするのも、今が初めてです。」
「……わ、私は、……でもっ。」
――初めてじゃない。何人もの男の人と、もう何度もこんなことを……。
その告白は声にはならず、みのりは心の中でつぶやいた。
こんなにも純粋に一途に想ってくれる遼太郎…。できることなら、そんな遼太郎には、真っ新な自分を捧げたかった。遼太郎が初めて愛する女性が、若くもなく清らかな自分でもないことを、心の底から申し訳なく思った。
「先生がとても綺麗だってことは、知っています。それとも、……イヤなんですか?」
何度も遼太郎を制止するみのりを、遼太郎はみのりの頭の両脇に手をついて、じっと見下ろして確かめた。
その真っすぐ澄んだ目に見つめられると、みのりも自分の心に嘘は付けなくなる。それは、生徒だった遼太郎に対して〝あってはならない〟と、自分の中でずっと否定していた願望だった。
「イヤじゃない。……ずっとこうやって抱いてほしいって思ってた。」
遼太郎は柔らかく微笑んで、固く握ったみのりの両手にキスをした。みのりも両手を解き、その胸元に遼太郎を迎え入れる。