Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「それじゃ……、行くね?」
改札口の前で、とうとうみのりが意を決すると、遼太郎はぎこちなく頷くだけの返事をした。
そして、みのりが背を向けて改札に入ろうとした瞬間、遼太郎は追いかけるように、もう一度ギュッとみのりの手首を掴んだ。引っ張られて驚いたみのりが、目を丸くして振り向く。
「もう……。遼ちゃん。」
まるで駄々っ子のような遼太郎を、みのりは微笑みながら優しく諌めた。遼太郎も唇を噛みながら突発的な感情を収め、みのりの手を離すと両手をジーパンのポケットに突っ込んだ。
みのりが改札を抜けて向こう側へ出ると、そこでもう一度振り返った。
「体に気をつけて、頑張ってね!」
笑顔で手を振るみのりに、遼太郎も応える。
「冬休みになったら、すぐに会いに行きます。」
みのりが笑顔のまま頷いて、ホームへ向かおうとしたとき、ふと遼太郎の背後から注がれる視線に気がついた。
その視線の主を確かめて、みのりの表情から笑みが消える。
向かい合う遼太郎も、そのみのりの異変に気付く。みのりの眼差しが自分にないので、それが向く先を探して振り向いた。
そこにいたのは、陽菜。
つい先ほど、みのりも心配していた陽菜が、二人を見つめたまま人々のざわめく駅の中に立ちすくんでいる。