Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
25 〝宿題〟の代償 Ⅰ
みのりの姿を目で追って、それが見えなくなると、遼太郎は意を決したように、もう一度振り返った。すると、やっぱりそこには陽菜が立ちすくんでいる。
陽菜と会う約束をしていたわけではない。陽菜には話しかけず、このまま無視して帰ってしまおうかと、意気地のない思いが遼太郎の中をかすめる。
しかし、みのりに断言したことを思い出して、遼太郎は陽菜へと歩み寄った。
「……どうして、こんなところに……?」
なんの感情も浮かべず、いつものように笑いかけてもこない陽菜に、遼太郎が話しかける。この駅は大学からも離れているし、陽菜が通学で使う路線でもなく、陽菜がいるはずのない場所だった。
陽菜は、今目の前で見てしまったことを、遼太郎に確かめるようにじっと見つめてから、問いに応えるために口を開いた。
「……狩野さん、昨日はゼミのミーティングに行くって言ってたのに、今日来なかったから。連絡しても返信がないし、みんなは『風邪でも引いてるんじゃないか』って……。だから私、心配になって、狩野さんのアパートに行ってみようと思って……。」
遼太郎は納得して、ため息をつきながら一つ頷いた。
陽菜のこの行動一つからでも、彼女が自分を想ってくれていることが分かる。しかし、それは遼太郎にとって、ずっと〝重苦しいもの〟に他ならなかった。ずっと想い続けていたみのりと想いが通じ合った今は、なおさらだった。