Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 しかし、部屋の真ん中に敷かれたラグが、ほのかに茶色くなっている。それは紛れもなく、みのりがここにいた証拠。そこにあるベッドで、溢れてくる想いをみのりに注ぎ込んだ。

 遼太郎はベッドに腰を下ろしてから寝転がり、五感で感じ取ったみのりのすべてを呼び起こした。この記憶は、自分が勝手に思い描いた妄想ではない。震えを伴うような感覚が体中を駆け巡って、もう一度みのりをこの手に抱いて、その感覚を確かめたくてたまらなくなる。

 でも、もうみのりはここにはいない。次に会えるのは、三ヶ月も先だ。その切ない現実を思うと、頭の中はいっそうみのりのことでいっぱいになる。

 遼太郎にとって、陽菜のことは二の次だった。二年半もの間、会えなかった時の長さの分、募り続けたみのりへの想いが大きすぎて……、今の遼太郎にはみのりのことしか考えられなかった。


 そして、夕方が間近になると、遼太郎はいつものようにアルバイトへと向かった。
 〝環境関連の会社〟といっても、その内容は多岐にわたり、遼太郎が担わされている業務は、オフィスビルなどから出されるゴミの収集や分類だった。エコロジカルなことなど、専門的な勉強ができるかも……というアテは見事に外れてしまったが、仕事は仕事、与えられたことをこなしていくしかない。それでも、どんなところにもその〝世界〟はある。ゴミから見えてくる世界を知ることも、遼太郎にとっては貴重な経験に違いなかった。


< 644 / 775 >

この作品をシェア

pagetop