Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……きゃ……!?」
ドアを開けた瞬間に〝何か〟がぶつかってきて、みのりはかすかな声を上げる。
その次の瞬間、みのりの左の二の腕に熱く貫かれるような痛みが走った。
みのりが来客の応対に出た玄関から、何の気配も感じられない。そのことに遼太郎が気がつくのと、
「……遼ちゃん……。」
と、みのりが呼ぶ弱々しい声が聞こえてきたのは、ほぼ同時だった。
その声色に不審さを感じ取った遼太郎が、ベッドからその身を跳ね上げさせる。自分がどんな格好をしているかなど考える余裕もなく、居間のドアを開けると、玄関に通じるキッチンの光景が目に飛び込んできた。
左腕を右手で押さえて、うずくまるみのり。
その右手の指の間から、鮮やかすぎる赤いものが止まることなく溢れ出している。
「――先生!!?」
遼太郎が目を剥いてみのりの側に跪くと、みのりは痛みに耐えながら遼太郎に訴えかけた。
「……先に、陽菜ちゃんの手にあるものを取り上げて。」
「……え?」
訳が分からず動揺しながら、遼太郎は玄関のドアを振り返る。するとそこには、ペティナイフのような小さな刃物を両手に握りしめ、その切っ先をこちらに向けている陽菜が立っていた。
「……!!」