Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎は大きく息を吸い込んだ後、ようやく言葉を絞り出す。
「……本当に、死ぬところだったんです……!」
抱きしめられるみのりの耳に、遼太郎の声の切ない響きが聞こえてくる。いっそう力が込められる腕は、かすかに震えていた。
傷口は小さいのに、流れ続けて止まらなかった血。それを目の当たりにして、遼太郎はどれほど不安だっただろう。
みのりは自由になる右腕を、遼太郎の背中に回して撫でさすった。
「……心配かけてしまって、……ごめんね?」
遼太郎の胸に唇をつけながら、みのりが語りかける。その微かな声を聞いて、遼太郎は唇を食いしばった。きつく瞑った目の奥から涙が滲み出て、体の震えが大きくなる。
優しく慰めるようなみのりの手の動き、遼太郎の腕を通して伝わってくるみのりの血の通った温かさ、それは紛れもなくみのりが生きている証拠だった。
「……謝らなきゃならないのは、俺の方です。先生をこんな目に遭わせて……。」
遼太郎は腕の力を緩めて抱擁をほどき、それから壊れものを扱うように、みのりの体をベッドへと寝かせた。
みのりは頭を枕に乗せて、枕元にある遼太郎の思いつめた顔を見上げる。
「こんな傷くらい、全然痛くも苦しくもない。私はあなたを守るためだったら、なんだってするんだから。」
みのりはそう言いながら右腕を伸ばして、そっと遼太郎の頬を撫でた。