Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
それだけで、遼太郎は十分だった。自分のこの想いを、みのりがしっかりと受け取って、その心の一番大切な場所にしまい込んでくれたと思った。
「さ、先生は眠ってください。俺、ずっとここにいますから。」
遼太郎はいつもの優しい微笑みを見せて、みのりの腕を掛布の中へと仕舞った。
「うん。でも、遼ちゃんも眠らなきゃ。」
心配そうに、みのりがそう言うのを聞きながら、遼太郎はいっそう笑ってみせる。
「大丈夫です。俺はいつでも寝れますから。先生が眠るまで側にいます。」
「……うん。」
みのりは素直にうなずいて、目を閉じた。寝たふりでもしないと、遼太郎もいつまでも眠ることができない。
病室の中を静寂が立ち込めて、お互いの息遣いだけが耳に届いてくる。
未だ残る鎮静剤のせいで、意識は次第に眠気を帯びてくる。思考は安らかな虚無の中を漂い始め、心も落ち着いて、自分にもそれが見極められるようになる。
「……遼ちゃん。」
眠りに落ちる前に、不意にみのりが口を開いた。
枕元でみのりの寝顔を見つめていた遼太郎は、視線を合わせて和ませるだけで、返事の代わりにした。
「……ありがとう。私、こんなふうにきちんと『愛してる』なんて言われたの、生まれて初めてよ……?」
そんなみのりの言葉を聞いて、遼太郎はほのかに顔を赤らめた。〝生まれて初めて〟というフレーズが、遼太郎の心を甘くくすぐった。