Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「陽菜ちゃん、俺が車で送ってる間中、ずっと黙ったままだったけど……。とんでもないことしでかした割には、他人事みたいにケロッとしてたよ。」
それを聞いて、遼太郎も大きなため息をつく。警察に届けず〝事件〟にしなかったのはいいが、これからも大学で会うであろう陽菜に対して、どんなふうに応じていくべきか分からなかった。
「今回のことは、俺もずいぶんショックを受けてるんだ。〝女〟って怖いな。本気で分からなくなったよ。」
佐山の神妙な声を聞いて、遼太郎はその真意を探るように彼の顔を見つめる。
「俺……、陽菜ちゃんのこと、本当に可愛い子だって思ってたんだ。顔もスタイルも、もちろん性格や頭の良さも、あんな完璧な子はいないって思ってた。……だけど、あんな恐ろしい女だったなんて……。」
佐山はまるで自分に降りかかった災厄のように、うなだれて頭を抱えている。
でも、そう思っていたのは、佐山だけではない。遼太郎だって陽菜のことを、そこまでしてしまう女だとは思っていなかった。この命よりも大切なみのりと、似ているところがあると思っていたくらいだ。
「猛雄はあの子のあんなところを、見抜いてたんだな。猛雄に言われた通り。俺には女を見る目がなかったってことだ。」
再び大きなため息をつく佐山を励ますように、遼太郎は薄く笑いかけた。